キーレスキーのボタンを押すと、キーのランプは赤く点灯する。しかし、車は完全に沈黙している。電池も交換したばかりなのに、なぜだ。そんな不可解な症状に悩まされた時、私たちはついキー本体の故障ばかりを疑ってしまいます。しかし、その原因は、全く別の場所、すなわち「車両本体のバッテリー」にあるかもしれません。キーレスシステムは、キーと車両が双方に電波を送り合うことで成り立っています。キーが信号を送るための電力はキーの内蔵電池から供給されますが、車両がその信号を受け取り、ドアロックモーターを動かしたり、ハザードランプを点滅させたりするための電力は、全て車両本体のバッテリーから供給されているのです。そのため、車両のバッテリーが完全に上がってしまっている、あるいは著しく弱っている状態では、たとえキーが正常に強力な電波を発信していても、車両側がそれに応答するための力が残っておらず、結果として「キーレスが反応しない」という症状が発生するのです。この場合、キーレスだけでなく、ルームランプやヘッドライトといった、他の電装品も点灯しない、あるいは非常に暗くなっているはずです。メーターパネルの警告灯もつかないかもしれません。こうした症状が見られる場合は、原因がキーではなく、車両のバッテリー上がりである可能性が極めて高いと言えます。この状況での唯一の解決策は、他の車から電気を分けてもらう「ジャンピングスタート」を行うか、ロードサービスを呼んでバッテリーを充電・交換してもらうことです。バッテリーが正常な状態に戻れば、何事もなかったかのようにキーレスも復活するはずです。また、バッテリーが完全に上がっていなくても、電圧が低下しているだけで、キーレスの受信感度が著しく低下することがあります。「以前は数メートル離れていても反応したのに、最近はドアのすぐそばでないと効かない」といった症状は、キーの電池消耗だけでなく、車両バッテリーの劣化の前兆である可能性も考えられます。キーレスの不調は、キーだけの問題と決めつけず、愛車全体の健康状態を示すバロメーターかもしれない。その視点を持つことが、思わぬトラブルを未然に防ぐことに繋がるのです。
キーレスと車両バッテリーの意外な関係