キーレスキーが光るのに反応しない。電池を交換しても、場所を変えても、症状が改善しない。こうなると、いよいよキー本体、あるいは車両側の本格的な故障を疑う必要があります。では、その不具合は「修理」で直るものなのか、それともキーごと「交換」しなければならないのか。その判断は、専門家でなければ難しいものですが、その基準となる考え方を知っておくことは、ディーラーや修理工場と話をする上で役立ちます。まず、「修理」で対応できる可能性があるのは、キー内部の基盤に、物理的な損傷がある場合です。例えば、「ボタンのゴムが破れて、スイッチがうまく押せない」「電池の接触端子が錆びたり、曲がったりしている」といったケースです。腕の良い電装系の修理業者であれば、基盤の洗浄や、端子の修正、ハンダの付け直しといった、細かな修理で機能を回復させてくれることがあります。ただし、これは非常に専門的な作業であり、対応できる業者は限られます。一般的に、ディーラーではこうした基盤レベルの修理は行わず、アッセンブリー交換(キー全体の交換)となるのが通常です。一方、「交換」が必要となるのは、より深刻な故障の場合です。最も多いのが、キーを地面に強く落としたり、水没させたりしたことによる「電子基板の内部的な破損」です。この場合、目に見える損傷がなくても、内部のICチップや回路がダメージを受けており、修理はほぼ不可能です。新しいキーを作成し、車両に再登録するしかありません。また、キーからの信号を車両側で受信する「レシーバー(受信機)」や、車内に複数配置されている「アンテナ」といった、車両側の部品が故障した場合も、当然ながらその部品の交換が必要となります。この場合、キー自体には何の問題もありません。どちらが原因なのかを特定するためには、ディーラーなどが持つ専用の診断機器(スキャンツール)で、エラーコードを読み取る必要があります。この診断によって、キーが信号を発信していないのか、それとも車両が信号を受信できていないのかが判明し、修理すべき箇所が特定されるのです。キーの不調は、様々な要因が絡み合う複雑な問題です。自己判断で高価なキーを注文してしまう前に、まずはプロによる正確な診断を受けることが、無駄な出費を避けるための最も賢明な道筋と言えるでしょう。
キーレスの故障?修理と交換の判断基準