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同乗者が車の鍵をなくした!誰が費用を負担する?
友人とのドライブ旅行や、会社の同僚との出張。そんな、複数人で車に乗っている時に、運転者ではない「同乗者」が、預かっていた車の鍵をなくしてしまった。この非常に気まずく、そしてデリケートな状況において、高額な鍵の作成費用は、一体誰が負担すべきなのでしょうか。法律的な観点と、人間関係の観点から、この難しい問題を考えてみましょう。まず、法律的な観点から言えば、原則として、鍵を紛失させた「直接の原因者」、つまり同乗者に、その損害を賠償する責任があると考えられます。これは、民法上の「不法行為」または「債務不履行」にあたる可能性があります。運転者が同乗者に鍵を預けるという行為は、暗黙のうちに「その鍵を適切に管理し、返還する」という契約(寄託契約)が成立していると解釈できます。その鍵を紛失する行為は、この契約上の義務を果たさなかった(債務不履行)、あるいは、過失によって他人の財産(鍵と、それによってもたらされる利益)に損害を与えた(不法行為)と見なされるのです。したがって、鍵の作成にかかった実費を、運転者が同乗者に対して請求することは、法的には正当な権利と言えます。しかし、現実は、法律の理屈だけで割り切れるものではありません。そこには、友人関係や、職場での上下関係といった、デリケートな人間関係が絡んできます。例えば、長年の親友との旅行中に起きたアクシデントで、法的な権利を振りかざして全額を請求することが、その後の友情にとって最善の選択と言えるでしょうか。あるいは、会社の部下が、上司であるあなたの指示で鍵を預かっていた際に起きたミスに対して、全額を負担させることが、パワハラと受け取られかねないリスクはないでしょうか。このような状況では、当事者同士の冷静な話し合いが、何よりも重要になります。まずは、紛失した同乗者が、誠心誠意、謝罪することが第一歩です。そして、費用の負担については、全額を一人に負わせるのではなく、例えば「半分ずつ負担する」「運転者が少し多めに負担する」といった、お互いの関係性や、その時の状況(どちらの不注意が大きかったかなど)を考慮した、妥協点を見出す努力が必要になるでしょう。車の鍵の紛失は、金銭的な損失だけでなく、人間関係にも亀裂を生じさせかねない、非常に厄介なトラブルなのです。
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イモビライザーキーを紛失したらどうなる?
「あなたの車、イモビライザーは付いていますか?」。車の鍵をなくして鍵屋に電話した際、このように尋ねられて、初めて自分の車にそんな機能が付いていることを知る人は少なくありません。そして、このイモビライザーの有無が、鍵を紛失した後の運命を大きく左右することになります。イモビライザーとは、車両盗難を防止するための、極めて高度な電子認証システムです。キーの持ち手部分に埋め込まれたトランスポンダと呼ばれるICチップには、一台一台固有のIDコードが記録されています。エンジンを始動させる際、車両側のコンピューターが、このキーのIDコードを読み取り、事前に登録されたコードと一致するかどうかを照合します。もし、コードが一致しなければ、たとえ鍵の形状が完全に一致していても、エンジンには点火信号が送られず、始動することができません。この仕組みにより、従来の、鍵の形だけを複製した合鍵や、配線を直結するといった古典的な盗難手口は、ほぼ通用しなくなりました。しかし、この強固なセキュリティシステムは、いざ正規のキーを全て紛失してしまった際には、オーナー自身にとっても大きな壁となって立ちはだかります。イモビライザーキーを紛失するということは、単に物理的な鍵をなくしただけでなく、愛車のエンジンを始動させるための「電子的な許可証」を失ったことを意味します。そのため、新しい鍵を作るには、ディーラーや専門の鍵業者が持つ、特殊な診断機器(スキャンツール)を車両に接続し、車両のコンピューターに直接アクセスして、新しいキーのID情報を新たに登録し直すという、専門的な作業が不可欠になるのです。さらに、セキュリティを万全にするためには、紛失した古いキーのID情報は、コンピューターから完全に削除し、無効化する必要があります。この一連の作業は、時間も費用もかかり、オーナーに大きな負担を強いることになります。イモビライザーは、普段はその存在を意識することなく、私たちの愛車を静かに守ってくれています。しかし、その恩恵は、私たちがキーを正しく管理しているという、大前提の上に成り立っているのです。