自転車やバイクの盗難防止において「地球ロック」という言葉はもはや常識となりつつありますが、この基本中の基本とも言えるテクニックを実践せずに、ただU字ロックをホイールに通しているだけの状態がいかに無防備で意味のない行為であるかについて、改めてその危険性を深く理解しておく必要があります。地球ロックとは、地面に固定されたガードレールや標識、駐輪場のラックといった動かない構造物と自転車のフレームを一緒にロックすることで、車体ごと持ち去られるのを防ぐ方法ですが、もしこれを行わずに単体でロックしていた場合、犯人にとってその自転車は「鍵がかかっていて乗って帰ることはできないが、持って帰ることはできる荷物」に過ぎません。特に軽量化が進んでいる近年のロードバイクやクロスバイクは、女性や子供でも持ち上げられる軽さであるため、プロの窃盗団でなくても、通りすがりの出来心で盗もうとした人間でさえも、担いで数メートル先の軽ワゴン車に放り込むことは造作もないことであり、その作業にかかる時間はわずか数秒です。一度持ち去られてしまえば、犯人は人目のない倉庫やガレージで、時間を気にすることなく騒音が出る強力な電動グラインダーや切断機を使ってU字ロックを破壊することができますから、どんなに最強の硬度を誇る高価な鍵であっても、破壊されるのは時間の問題となってしまいます。つまり、U字ロックの強度が活かされるのは、あくまで「その場で破壊しなければならない」という状況を犯人に強いた時だけであり、持ち去りを許してしまえばその硬さは何の意味も持たなくなるのです。もちろん、駐輪場所によっては適当な固定物が見つからない場合や、条例で柵への係留が禁止されている場合もありますが、それでも複数の自転車同士をロックしたり、できるだけ人目につく場所に停めたりするなどの工夫が必要です。U字ロックは確かに強力なツールですが、それは車体を地面に繋ぎ止めるアンカーとしての役割を果たしてこそ輝くものであり、地球ロックという概念とセットで運用しなければ、その真価の半分も発揮できない「片手落ち」の対策になってしまうことを忘れてはいけません。
地球ロックをしないU字ロックは無力という現実